ジョージタウン4軒目・・・「REGGAE CLUB(レゲエクラブ)」で“Tiger BEER”

1月13日(金) 時刻は21:30、「KAPITAN」を後にして夜の街を彷徨う。“彷徨う”と言っても、その目的は明確だ。
「KAPITAN」では叶わなかった願い、そう、ビールで(ビールに?)酔うこと・・・
どこかに、我々のそんな願いを満足させるような店はないか、うろうろと辺りを物色しながら歩いた。
 
春節旧正月)も間近、“如意宝珠”を持った、勇猛な龍の姿が見える。これで災禍も防がれることだろう・・・

チュリアストリートを脇に逸れた。暫く歩くと交差点の角に立派な門構えをした建物が見える。辺りはひっそりと
静まり返り、ひと気はない。何やら怪しい光が漏れているその場所に近づいてみた・・・そこには、解体された
大きな肉片がいくつも吊り下げられている。その肉をよく見てみる・・・豚だった。大きな耳が垂れ下がった頭
蹄の残った足、そして皮を剥ぎ取られた身の部分、その部位を大雑把に切り分け吊るしていたのだ。
きれいに剃毛されて現れた、透き通るような白い皮がとても印象的だ。そして、その肉を求める数名の客の姿も
・・・こんな時間に・・・ムスリムは豚肉を食べないはず、恐らくは華人系の人たちだろう。
歴史を感じさせる佇まい、結局その正体は、“精肉市場”なのだろうか?・・・
 

 
チュリアストリートに戻り、一軒のBARを見付けた。 店の名は、「REGGAE CLUB(レゲエクラブ)」
通りに迫り出すように並べられた簡素なテーブルと椅子、そこは白人で埋め尽くされていた。ここにするか・・・
テーブルの隙間を縫うように、オープンスペースの奥にある入口へ向かう。引き戸を押し店内を覗く。
薄暗い店内に、ボブ・マーリーの語りかけるような歌声が、籠るように響いていた、“no woman no cry”
そこに客の姿はなかった。

“中じゃない、な”、夜になり、幾分過ごしやすくなったとは言え、外は相応の暑さだ。それでも…
インドアでエアコンの快適さを享受したい気分ではなかった。大した理由じゃない、ただ、白人の中に埋もれて
一時、自分の人種を忘れられたら、そう思えれば・・・それでよかった。
安普請なベニア板の壁、そこに無数のサイン、恐らくは、この店を訪れた旅人が書いたものだろう。
それはまるで、装飾の一部と化して、この店の持つ自由な雰囲気を、さらに高めていた。
その横に置かれた小さなテーブルに座る。無造作に置かれたメニューを開く、が、何かを“つまむ”つもりは無い。
「KAPITAN」で飲めなかったビール、それが飲めるだけで十分だった。
マレー系の店員を呼び注文をする、“Tiger BEER”を、と。男は店の中へ消え、そして暫くして、小脇に瓶を
抱えて我々のテーブルに戻ってきた。RM9(約230円)、金と引き換えだ。皺くちゃのRM10紙幣をそっと手渡した。
一先ずは…渇いた喉を癒してくれるビールで、否、ビールに乾杯!・・・お預けを食らった分、この飲みなれた
ビールが何倍にも美味く感じられた。

そう言えば・・・まだ釣り銭を受け取っていない、暫く男の様子を眺めていたが、持ってくるような気配は無い。
渡した札はポケットに突っ込んだままだ。男を呼びその事を伝える・・・トボケテイル
さらに突っ込むと、“OH!忘れていた”、と言いながら釣り銭をよこしてきた・・・何だ・・・やっぱりネコババ
するつもりだったのか、私は決して性悪説論者ではないのだが・・・男は間違えの無い金額を我々によこしてきた。
別に嫌な気分じゃない、故意であろうが、無意識であろうが、そんなことはどちらでも構わない。
ただ…僅かな金額、たかがRM1(約25円)だからといって目をつぶってしまうのは負けを意味する。
金額の大小に関わらず正否はきっちりとさせておくべきなんだ。特に外国では…

つづく・・・